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Ragnarok OnlineやBelleIsleで遊ぶ人のあれやこれ。

IN LUTIE



いやぁね、変だとは思ってたンですよ
だってあれでしょ、男の方は確かにプリースト様なんだけども
どうみても格好がね……
この雪の中を歩いてきたとは思えないくらいにですよ、
胸なんてはだけてしまってるし、履き物なんて、ゴム草履ですよ
雪の中を歩いていたからそれも雪にまみれてるし
冷たくないンすかね。
…ああ、プリースト様は癒しの奇跡が使えるそうだから
平気なのかも知れんですけど
それにしたって、この街生まれのわたしが言うんでさ、
ここの寒さは並じゃねえんで

んで、連れの娘さんの方なんですがね
やっぱりちぃとばかし変わってて
格好からして、上級職のアルケミストのようなンすけど
プリースト様と並んでいる雰囲気は、まるっきり恋人のそれのようでもあるのに
どうみても13、14歳にしか見えないんでさ
ちぃと背丈のでかいプリースト様と比べりゃ、親と子ほども開きがあるし
しゃべり方もなんだかね…子供然としてるって言やあ、子供然としてる
…けど、私は気づいたンですけどね、その娘さんの指にはその、指輪がね、
結婚指輪のようではなかったけども、その子がそれを大事にしてるってのは
わかったもんでさ。やっぱりそういうことなんでしょうかね

都会では早婚が流行ってンのか、わたしにもあの子くらいの娘が一人いるもんで
男親としては複雑なもんです


まあ、みょうちくりんなお二人でもお客様には違いないもんだし
わたしは部屋を案内したんでさ
ここで1人部屋2つなんぞ用意しても不自然なモンだし、
まあ、2人部屋を手配したンすけどね、思えばそれが間違いだったかと
わたしは今頃、思ったりもしてるンですけど


部屋に案内したときゃあべつになんもなかったんですわ
娘さんの方は、やっと暖かい部屋に入れたせいかなんなのか
喜んで暖炉のほうへとお駆けなさったし
うちの娘が装飾した部屋を可愛いって言ってくだすったし
プリースト様のほうも、えらく丁寧にお礼を言ってくだすって
その時は、案内してよかったと思ったもんでさ


それからしばらくして、…ああ、どンくらいかね……
あの直後に仕掛けたシチューの鍋がまだコトコト言ってた案配だったんで
2,3時間くらいしか過ぎてなかったんでしょうけども
その、プリースト様が受付の方にいらっしゃって、甘味はないかと
おっしゃるんでさ
それを聞いてみりゃ、それもこれも甘ったるいものばっかりで
ちと娘に買いにいかせることにしたんですけども

そのプリースト様がね
ま、なんつうかその、娘の前じゃああんまり言えないもんですが
まあ、どうみても、…その…アレな雰囲気だったもんで、
やや、もちろんわたしは何も言いませんよ
場所柄、そういったお客さんもいないわけじゃねえし、むしろ恋人同士で
いらっしゃったなら、まあ間違いなくあることってーか
ああ、わたし何を言ってんでしょ、はは……

けれどまあ、あのお似合いのようで違和感の残るこの2人も、やっぱり
そういう間柄だったんだと、そンときは納得したんでさ

ところが、娘に使いを頼んでいる間に、受付に戻ってくりゃ、
もうプリースト様はいらっしゃらなかったんで
そんなにお待たせしたハズはねぇんだけども
でもまあ、使いが戻ってくるのはまだ先ですしね
あとで部屋にお持ちしたんですわ



んで、その朝のことですか
精算の為に部屋から出ていらっしゃったのは、プリースト様だけでさ
いたはずの娘さんはいやしねぇ
プリースト様はきちんと荷物をまとめられていたからまた部屋に戻る
ってのもないもンですから

わたし、ついつい聞いちまったんです
お連れの女性はって。
そしたら、プリースト様は、そりゃあ心に染み渡るような笑顔を
浮かべんなすって、…でも、そンだけだったんです
何も言わずに、ウチを出てお行きなすった

しかし、こういうことも別に珍しいことじゃねえもんで
2人一緒に来たお客様が別々に出て行かれる事も、あると言やあ、あるんです
なんだかんだ言っても男と女、その間には誰も入ることにゃできねぇもんでさ



ようやく、しまったってわたしが思ったのは、お二人がお使いになった部屋を
掃除しに入ったときだったンです
やや、別に荒らされてたとかね、そういうことじゃなくて
残されたベッドのシーツは、あのプリースト様がなすったのか
きちんと整えられてはいたンですがね
まあ、隠しきれねえ情事の跡っつーか…
拭いきれなかった血の痕を見りゃあ、
あの娘さん、そうだったのかと、ちらっと思っちまったのはまあ、
しょーもねえ男の性だと思ってもらっていいンすけども
シーツの上にいくらか硬貨が転がされていたのはプリースト様のお心ですかな
まあ、ありがたくチップとして受け取ったんですが
シーツの1,2枚は新調出来る額でさ
ま、それはいいんだけども


外へ抜けるドアの端々には、あるはずもねぇ水の染みが残ってるし
そのドアも、完全には閉め切られてはいなかった
つぅことは、あれです
昨晩にコトの後に、なんかの理由で娘さんは出てお行きになったんでしょう
それをプリースト様が追いかけて、結局独りで戻っていらっしゃった
一度でも外に出ないと、外の雪を室内に持ち込むことなんざ
できやしねえもンでさ
ドアが開けられた痕跡があるのだって理解できないんです

決定的だったのは、暖炉に残ってたリボンの燃えかすですかね
暖炉は暖かいんだけども、火にムラが出ることもあるんでさ
だからちぃと残ってしまったンだと思うんですが
ずいぶん高価な絹製のそれは、昨晩あの娘さんがつけてたもんに
他ならなくて。…よく似合ってたもんで、うちの娘にも、って思ったから
覚えてるもんでさ
そんなものを見つけてしまったわたしは、まさかと思ってね
火箸で下火になった暖炉をかき回してみたンすけど
やっぱり、出てきましたよ、指輪
焦げて煤けて、真っ黒になっちまってましたけどね
そりゃあ、確かにあの娘さんがつけてたもんです

後悔しましたさ、私は。
あの2人に本当は何があったかなんて知りゃしません
プリースト様は何もおっしゃらなかったし、娘さんはとっくにいないし
でもこの部屋が、2人に良からぬ仲違いの原因を用意しちまったってのは
確かじゃねぇっすか…

指輪は元通り暖炉に戻しておきましたがね
わたしが持っていても仕方がねえもんだし
どういう意図で放り込まれたもんだか知りませんが
ここがあの指輪の墓場だってあの2人のうちのどちらかが決めたンなら
別に問題はないんでさ
可燃料の邪魔になるわけじゃなし、先祖代々のこの宿…
時がすぎれば朽ちて消える事になるんでしょうけども
そうやって若い人たちの恋を見守るのも、
主からお預かりしたお役目だってんなら、喜んで受けますわ




気になるのは、あの2人の行く末と
2人分以上に用意したあの甘味が、どこに消えたのかってことくらいかね……






end.

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